〈第27回極美本展〉在日同胞画家が「会長賞」など受賞/朝鮮学校の児童たちの共同作品も

〈第27回極美本展〉在日同胞画家が「会長賞」など受賞/朝鮮学校の児童たちの共同作品も

《朝鮮新報》2021.10.06 

第27回極美本展(9月 28日~10月5日、東京都美術館、主催=一般社団法人新極美術協会)で、在日同胞画家5人が「会長賞」「大使館賞」「審査委員賞」など数々の賞を受賞した。授賞式が3日、東京都美術館で行われた。

第27回極美本展で、「会長賞」などを受賞した在日同胞画家たち(子どもたちの合同作品「へいわのおまつりはじまるよ」の前で、3日)

授賞式には新極美術協会の坂本唯市会長と山東昭子参議院議長、各国大使館の代表、受賞者たちが参加した。

坂本会長はあいさつで、文化芸術と国際交流の発展に尽力していきたいと述べた。

同協会の副会長で朝鮮の「人民芸術家」の朴正文画家の司会で受賞者が発表された。

夫正鵬さんが坂本唯市賞、金任鎬さんがバングラデシュ大使館賞、金聖蘭さんと金優華さんが極美審査委員賞、金明仙さんが特選に輝いた。さらに、夫正鵬さんの作品はアートプリントジャパン賞のダブル受賞となった。

極美本展では同胞画家たちの作品のほかにも、「へいわのおまつりはじまるよ」と題した北南朝鮮、中国、日本、朝鮮学校の児童たちによるオリニ絵画展の合同作品も展示された。

(鄭尚丘)

〈第27回極美本展〉「同胞画家としての感性が作品に」

新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年ぶりの開催となった第27回極美本展(9月 28日~10月5日、東京都美術館)で、在日同胞画家5人に多くの賞が授与された。文化芸術と国際交流の発展を目指す日本の展覧会で同胞画家たちが存在感を示した。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年ぶりの開催となった第27回極美本展(9月 28日~10月5日、東京都美術館)で、在日同胞画家5人に多くの賞が授与された。文化芸術と国際交流の発展を目指す日本の展覧会で同胞画家たちが存在感を示した。

坂本唯市賞とアートプリントジャパン賞を受賞した「帰郷」と夫正鵬さん

350余りの作品が出品されたこの展覧会の中でも、夫正鵬さん(東京第1初中教員)の「帰郷」(油彩、P100)は、会長賞といわれる坂本唯市賞とアートプリントジャパン賞のダブル受賞で特に注目を集めた。

朝鮮学校の入学式を描いた作品で、想像力と好奇心を刺激するいくつものギミックが施されている。そのすべてが同胞社会と民族教育への深い愛情に帰結しているところに作者の矜持が感じられる。

左のスーツとチョゴリ姿の2人は白黒で描かれている。校舎の造りから場所は東京第1初中で、新1年生をスマホで撮影する姿から、近年の入学式と思われる。背景には魚群が透けて現れる。それらを見通すように振り返る園児の視線と表情にも目を奪われる。

左の人物は在日同胞1世で、この場には存在しないことを白と黒の色使いで暗示している。1世を描くときに祖父母として表現されることはままあるが、この作品では若かりし頃の姿で描かれている。夫正鵬さんのアボジは学校建設に寄与し、地域同胞社会の発展に尽力した。しかし、還暦を待たずこの世を去った。2世である夫正鵬さんはアボジをはじめとする1世たちへの感謝と敬いの気持ちを込めて「年齢を重ねた姿ではなく、同胞社会の全盛期を築いた当時のままの姿で描きたかった」と話す。影にも意味がある。「たとえ、この場に存在しなくても、今日の同胞社会があるのは先代たちが確かに存在したからだ」と言うように、確かな存在として影を描き入れるのは作者にとって自然なことだった。二人の手前の女性は2世だという。これで、1世から2世、3世、4世までの各世代がこの作品には収められていることがわかる。

魚の正体はサケだ。母川回帰性の高いサケは大海原に旅立ち、生まれた川に戻り、生命を受け継ぐ。校舎に向かうサケの群れから、登場人物にとってウリハッキョが生まれ育ったところであり、「故郷」であることを示唆している。それは「帰郷」というタイトルにも表れている。

また、桜は日本の地を、ナノハナはアボジの出身地である済州島を連想して作品に込めたという。俯瞰する園児について、夫正鵬さんは「自由な視線で鑑賞して欲しい。もしかしたら不思議なものが見えているのかもしれない」と目を細めた。作者と同じようにこの作品の世界が目に映っているならば、園児は作者本人かもしれない。そんな想像も湧いてくる。

審査委員によると「在日朝鮮人画家としての視点と世界観が表現された」ことが受賞の決め手になっているという。

ほかにも、金任鎬さんの「人物1.」がバングラデシュ大使館賞、金聖蘭さんの「自問自答Ⅰ・Ⅱ」、金優華さんの「休日の朝」が極美審査委員賞、金明仙さんの「青磁のこころ」が特選を受賞した。

新美術協会の掛川正治理事長(審査会副委員長)は「特定の民族や人物に対して色眼鏡をかけて見るようでは、いつまでも仲間意識は生まれない。顔色を伺うばかりでは、その人の内面は見えてこない。在日朝鮮人画家は他者への尊敬と民族への誇りをもって制作に取り組んでいる」と述べた。

文芸同東京美術部の画家たちは「在日同胞画家としての感性が作品に生きている」と称賛を送った。また、在日同胞画家としての作品が日本の展覧会で堂々と展示されているばかりか、高く評価されていることに誇りを感じると話した。

(鄭尚丘)

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