〈民族教育と朝鮮舞踊13〉平壌音楽舞踊大学の通信教育①―専門部

〈民族教育と朝鮮舞踊13〉平壌音楽舞踊大学の通信教育①―専門部

《朝鮮新報》2022.02.18

1990年度入学した1期生―-卒業試験を終えて(上段左から2番目と右端は朝鮮舞踊の先生)

「하늘의 별 따기(夜空の星を手に入れる)」

近年世界でも、子どもの包括的な発達の観点から、自主性と創造性、社会性と文化的アイデンティティを育む学習手段として、学校における芸術教育が重視され、その役割が再認識されている。在日朝鮮学生にとっての芸術教育は、日本で生まれ育った子どもたちが民族の歴史と文化、情緒に触れて民族的矜持を自覚するばかりでなく、知・徳・体を兼ね備え豊かな感性を養い、他者とのコミュニケーション能力を高める効果的な教育となっている。一方で、祖国を離れている在日同胞は、生活の中で接する風景、風習、感情などが本国に暮らす人々とは違う。在日同胞は早くから朝鮮学校で、民族的感情や表現力について朝鮮舞踊等を通じて教育してきたが、本場の芸術にはまだまだほど遠かった。

民族芸術の本場で学びたい! 本物の朝鮮舞踊に接したい! その熱い願いを叶えてくれたのが通信教育であった。

祖国では1949年3月に国立音楽学校が、52年にはそれを母体にした平壌音楽大学が設立された。53年に設立された国立芸術劇場付属芸術学校の舞踊科は56年8月に国立舞踊研究所と統合し平壌舞踊学校になる。そして58年には国立舞踊学校、62年には平壌芸術大学に改編された。72年2月には平壌芸術大学と平壌音楽大学が統合して平壌音楽舞踊大学に発展し、同年10月から文化省の傘下に置かれた。73年からは各道に高等芸術専門学校が開校し、全国的に芸術教育が強化された。そして2004年に舞踊学部を舞踊学院として分離し、06年の新校舎竣工と同時に金元均名称平壌音楽大学となる。15年には金元均名称音楽綜合大学として拡大改編され、正規の教育課程として7つの学部と50余の講座が整備された。その他にも音楽研究所などが付設され、再教育・通信教育制度も備えられている。芸術専門家養成の最高学府の卒業生は国立交響楽団、マンスデ芸術団、ピパダ歌劇団をはじめ中央芸術団体に進出する。そのようなことからこの大学への入学は、《하늘의 별따기》(夜空の星を手に入れる)とまで言われている。また平壌音楽学院を金元均名称音楽綜合大学・平壌第1音楽学院とし、芸術秀才教育専門学校である金星学院芸術班を金元均名称音楽綜合大学・平壌第2音楽学院と改称した。現在、舞踊学部は平壌第2音楽学院に所属している。

1期生の卒業証書

総聯学生芸術ソジョ通信教育は、1984年に初めて音楽舞踊大学短期講習として実施された。民族音楽と朝鮮舞踊を本場最高峰の大学で、超一流の講師たちに体系的に学ぶことは、在日芸術家や学生たちの念願であった。私はその第1期生から通信教育に携わってきた。1期(中3から高3までの4年間)には、声楽(5人)、民族楽器(3人)、舞踊(5人)の13人が選抜された。平壌音楽舞踊大学では在日朝鮮学生たちのためのカリキュラムを整備し、文芸理論、音楽基礎理論、チャンダン、朝鮮舞踊基礎、バレエ基礎の科目の専門的な教育を施し、マンツーマンで指導をしてくれた。

90年3月28日には金正日総書記の配慮により、在日朝鮮専門芸術家・芸術教育者・大衆文化指導者を養成する体系的な正規通信教育へと発展した。高級部1年から3年間、毎年夏の3~4週間は祖国で受講して進級試験を行い、3年時には卒業試験を受けて合格者には専門部(通信)の卒業証書が授与される。90年の制度化後、第1期生で舞踊コースに入学したのは、オーディションに合格した5人であった。1期生たちは皆「人生においてかけがえのない経験と学びの日々、想像でしかなかった祖国を身近に感じ、舞踊漬けになりながらしっかり学べたことは自信になり一生の宝物です。朝鮮舞踊の素晴らしさを魂で感じ過ごした青春時代は今もしっかりとした人生の軸になり、同胞社会に繋いでいく原動力になっています」と語っている。

「総聯通信第22期専攻卒業試験」後の記念撮影―-学父母たちと一緒に(上段右から2番目がチョン・へオㇰ先生、右から5番目が筆者)

私は、2013年に音楽舞踊通信受講生訪問団の団長として通信生たちを引率した。音楽は金元均名称平壌音楽大学で、舞踊は平壌舞踊学院で受講した。入学通知書や入学式、成績表や評定書、卒業証書や卒業式まで正規教育と同様に行ってくれた。舞踊コースは3年間にチャンダン(54限)、舞踊表記(54限)、特講(3限)、朝鮮舞踊(152限)、バレエ基礎(60限)、自主練習(108限)に日本での学習及び専攻の自主練習までカリキュラム化されている。通信生たちは早朝から夜遅くまで平壌ホテルでの自主練習を怠らなかった。バレエ基礎にはピアノ、朝鮮舞踊基礎にはチャンゴと伽倻琴の伴奏専門家が生で伴奏してくれる。先生たちは少しでも祖国の土の匂い、本場でしか感じ取れない感性や民族的情緒を育て、舞踊の基本を身につけさせるため熱心に指導してくれる。舞踊学部のチョン・へオㇰ先生は「生徒たちからは、祖国の息吹や民族的なものを少しでも多く感じとって舞踊で表現したい、という熱意が感じられた。指導すると、すぐにそれを習得しようと努力を惜しまない。短期間に飛躍的に水準が上がっていくことに感服している」と褒めてくれた。

音楽舞踊大学専門部(通信)は、祖国を取り巻く情勢がどんなに厳しくても継続され、今まで29期にわたり約400人(舞踊は約200人)が卒業し、現在も在日芸術界で活躍している。朝鮮舞踊の本場で受けたとても得難く有難い通信教育は、本物の朝鮮舞踊を在日朝鮮人社会に広めるのに大きく貢献している。

朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)

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