在日本朝鮮文学芸術家同盟

強制労働の史実伝える「笹の墓標展示館」大阪巡回展/大阪中高生徒らの作品展示も

笹の墓標展示館は戦争と植民地支配の歴史を伝える日本国内でも数少ない歴史資料館です。2020年に建物が倒壊したことで再建のために活動しています。全国へ展示をお届けする巡回展を開催中です。

《朝鮮新報》2022.10.03

世代と思いを継ぎ、犠牲者と対話を

9月21日から25日まで、大阪市の本願寺津村別院で開催された「北海道・笹の墓標展示館」大阪巡回展

北海道を中心とした強制労働犠牲者たちの遺骨発掘および追悼と、歴史を発信・共有する拠点となっていた「笹の墓標展示館」。1995年、北海道雨竜郡にある旧光顕寺の本堂を改装し建てられた「展示館」は、2020年1月に雪の重みで倒壊した。この「展示館」を再建するための巡回展が各地で行われている。

9月21日から25日まで、大阪市の本願寺津村別院では「東アジアの未来に希望の種を―強制労働犠牲者の史実を伝える『北海道・笹の墓標展示館』大阪巡回展」(主催=笹の墓標展示館再生支援巡回展・関西実行委員会)が行われた。

場内では30代から40代までを中心とする実行委員たちが展示の説明を行っていた

ダム建設によりできた北海道雨竜郡の人造湖・朱鞠内湖。この一帯では、アジア太平洋戦争下の1935年から37年までに鉄道工事が、38年からは水力発電用のダム工事が行われ、多くの朝鮮人と日本人タコ部屋労働者が犠牲となった。1970年代以降の調査により、その数は200人を超えることが判明している。

「展示館」は、そのような犠牲者らにとどまらず、人々が日本の加害の史実に向きあう拠点として機能してきた。今回の巡回展は、「展示館」の再建資金を集め、戦時下の強制労働の歴史をよりたくさんの人に知ってもらおうと企画された。昨年10月の北海道・滝川での第1回目を皮切りに、札幌や旭川など道内各地で行われ、今年6月からは新潟、愛知、富山そして今回の大阪まで日本各地で展開されてきた。

会期中、500人以上が会場を訪れた

大阪巡回展には会期中、500人以上が訪れた。会場では、鉄道工事とダム工事で犠牲となった朝鮮人と日本人の位牌や骨箱、遺品のほか、朱鞠内など強制連行の地に関する歴史や遺骨発掘活動のようすなどを収めた写真パネルなど、死者といまを生きるわたしたちとの「対話」をテーマにしたさまざまな展示物が並んだ。また会場の一角では、ドキュメンタリー映画「笹の墓標」など、遺骨発掘活動がはじまった当初を映した貴重な映像も上映され、ブースごとに足を止めゆっくりと展示物を眺める人、スタッフの説明に熱心に耳を傾ける人、映像をみながら涙を流す人など、犠牲者たちへ思いを馳せる光景が会場いっぱいに広がった。

位牌と骨箱の後ろにあるのは、大阪中高美術部の生徒らが手掛けた「笹の墓標展示館」の絵

とりわけ来場者たちの耳目を引いたのは、会場内、位牌や骨箱が展示された真後ろに掲げられた4.5メートル×160センチからなる大きな作品。「展示館」を描いた作品は実行委員会からの依頼を受けた大阪中高美術部の生徒らが手掛けたもので、23日には生徒らが直接作品紹介をする場も設けられた。

大阪中高美術部で部長をつとめる朴連朱さん(高3)は「自分は4世で、強制連行という事実について、絵を描くことで考え、実感を持つことができた」と語る。

朴連朱さん

「展示館」の絵を完成させるうえで、犠牲者らへの追悼の意を何よりも込めたと述べながら「制作依頼を受けたとき、私たちが朝鮮人として、朝高の美術部としてやりとげなくてはという気持ちが生まれた」と吐露した。一方で、この日会場を訪れた多くの来場者を前に、「こんなにたくさんの方が来るとは思わなかったし、これほどまでに関心が集まるテーマなんだということも知らなかった」と新たな発見について述べながら、自身が思う歴史を重んじる必要性についてこう語った。

制作した絵を背にして、作品紹介を行う大阪中高美術部の生徒たち

「繰り返し歴史を学ぶということは、無念な思いで亡くなった先祖たちへの敬意の表しにもなる。自分たちは、残されたものとして、かつての被害や経験を伝えていかなくてはならないと思う」(朴さん)

「朝鮮人が強制連行された炭坑などの歴史を調べている友人がいて、その友人に誘われて10年以上前に、朱鞠内や旧・光顕寺に訪ねたことがある」

会場の一角では、ドキュメンタリー映画「笹の墓標」など、遺骨発掘活動がはじまった当初を映した貴重な映像も上映された

そう語るのは谷井尚子さん(69、大阪市在住)。朱鞠内を訪ねて以来、この問題に関心があるという谷井さんは「これだけいろんな過去が掘り起こされているのに、日本政府が『戦後処理は解決済』だという態度をとるのはすごく恥ずかしいし許せないこと」だと述べたうえで「国や政府、そして私たち市民がもっと歴史から学ぶ姿勢をもたなくてはならないと思う」と強調した。

殿平善彦さん(「笹の墓標展示館再生・和解と平和の森を創る実行委員会」共同代表)による講演

巡回展の実行委員長を務めた姜守幸さん(48)は、大阪での巡回展を終えて「笹の墓標再生実行委員会共同代表の殿平善彦先生がこの活動をはじめたのは30代の頃、その思いを受け継ぎ、30~40代のメンバーを中心に今回実行委員が組まれた。そして実行委員の思いを受け止め、大阪中高の生徒たちが犠牲者に寄り添う大変すばらしい作品をつくってくれた。これからも世代を継ぎ、思いを繋いで犠牲者たちと向き合い、対話していきたい」と話した。

巡回展は、5日から東京・築地本願寺で、17日からは京都・西本願寺で開催される予定だ。

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