ウリマルを考える⑪南朝鮮のウリマルの現状を考える

ウリマルを考える⑪南朝鮮のウリマルの現状を考える/朴宰秀

《朝鮮新報》2023年04月26日

南朝鮮のウリマルの現状を考えるとき、真っ先に頭に浮かぶのが外来語の乱用です。南朝鮮のウリマルには外来語と漢字が氾濫しています。また、英語偏重教育と私教育は度を越しています。その結果、社会と教育の場でのウリマルが瀕死状態にあります。今回は、このような状況に陥っている南朝鮮のウリマルについて考えてみます。

外来語の氾濫

南朝鮮の人々には、自国のものを見下し、他人のものに憧れる悪い癖があるようです。その代表例が、ウリマルを見下し、英語や漢字を尊ぶ風潮です。南朝鮮の多くの人は、ウリマルを使うより英語を使うことに優越感を覚えるようです。

その代表格が尹錫悦です。彼の言葉の端々から、「ガバメント・エンゲージメント(政府の介入)がレギュレーション(規制)だ」とか、「2023年はアグレッシブに行こう」という英単語が次から次へと出てきます。また、「国立追慕公園と言うとあまり格好良くないが、『ナショナル・メモリアル・パーク』と言うと格好がつく」などとウリマルを見下す発言を繰り返しています。

南朝鮮では高い商品ほど外国語で商標をつけるのが一つの流行となっています。南朝鮮の商標価値評価順位20位圏内の商標の中で固有語で表記された商標は一つしかなく、残りの商標はすべて外来語とごちゃまぜ語です。

企業はウリマルの商号と看板を捨て、英語の看板を掲げています。大学は「韓国語」と国の歴史までも英語で教えると言っています。

「MBC」「KBS」「SBS」など南朝鮮の3大放送局のドラマと芸能番組では1分に1回以上の外来語とごちゃまぜ語、씨발(ちくしょう、くそったれ)などの卑俗語が数多く使われています。

南朝鮮の歌謡界、特にK‐POPには英語やごちゃまぜ語で作られた歌が多く、外国の歌なのか南朝鮮の歌なのか区別できないほどです。

日刊新聞に使われる外来語は1日平均800個余り、放送タイトルも50%以上が外来語、街の建物にかかっている看板の90%が外来語とごちゃまぜ語です。

ラジオやテレビ、新聞や雑誌などに蔓延している外来語は、南朝鮮で大きな問題となっています。旧世代は報道内容を理解できず疎外されており、世代間のコミュニケーションの断絶と青少年に英単語とごちゃまぜ語を使う誤った言語習慣を植えつけています。

このように南朝鮮では社会的にウリマルを蔑視する風潮が蔓延しており、民族固有の言語と民族性が死滅しつつあります。

漢陽大学の某教授はこの状況を見て、「地下鉄の放送も英語で行い、田舎の小学校の案内板も英語で書かれるのが今日のこの地の現実だ。外国語に依存する言語の屈従、言語奴隷の境遇は文化的従属を深め、固有の私たちのすべてを害する結果を生んでいる」と批判しました。

加熱する英語偏重教育

南朝鮮では1997年に小学校3年生から英語教育を導入しました。「2009改正教育課程」で小学生の国語と特別活動を減らし、2010年には3・4年生で週2時間、2011年から5・6年生で週3時間に英語の時間を増やしました。

それだけではありません。ウリマルを学ぼうと南朝鮮を訪れる留学生にまで「外国人留学生入学許可の際、『韓国語』能力試験4級以上または英語能力試験(TOEFL550、CBT210、IBT80、TEPS550)以上」でなければならないと定め英語を押し付けています。その理由が、南朝鮮の大学では英語で講義するので英語能力を重視すると言うのです。

南朝鮮の教育部は英語しか頭にないようです。英語教育には数千億ウォンを使うのに国語(ウリマル)教育には数百億ウォンを使うことも惜しんでいます。

南朝鮮の政府・教育部は、ウリマルと民族と教育を破壊する行為をためらうことなく行うことで国と民族の弱体化を招いていることを全く自覚していません。

こんな状況にある南朝鮮に果たして明るい未来があるのでしょうか。

英語偏重がもたらしたもの

南朝鮮では政治家たちによる英語のグローバル化政策により、米国式文化が社会の隅々に浸透しています。

金泳三(1993〜98年執権)が「グローバル化してこそ生き残れる」と始めた英語早期教育は、私教育を助長し、国語と歴史教育を後回しにして社会と教育界を不安に陥れました。

南朝鮮では英語の早期留学ブームが起こり、기러기아빠(雁アッパ:雁は渡り鳥。南朝鮮から英語圏に留学している妻子に仕送りをする南朝鮮在住の父親に例えている)。펜긴아빠(ペンギンアッパ:留学した妻子に会いに行くこともできなくなった父親に例えている)が生まれました。

また、英語の発音が上手になると舌を手術する子どもまで出てくる始末です。留学で妻子と離れて生活する孤独感、仕送りをするための生活苦を理由とした自殺が深刻な社会問題になりました。

金大中政権時代(1998〜2003年)から京畿道を皮切りに英語村を作り、英語特区、特別自治道も作ろうとしました。英語を南朝鮮の公用語にしようという、とんでもない主張まで飛び出しました。

会社名をKT、LG、SKと英語に変えた会社が多く、実際に英語で会議をする企業と英語で講義する大学まで出てきています。

企業で英語スキルを採用条件としたため、親は子どもの将来のためだと英語教育に奔走しています。小学校3年生から英語を教えてもうまくいかないので、ウリマル教育をそっちのけにして幼稚園から英語を習わそうと血眼になっているのです。

この英語亡国病がどこまで広がるか本当に心配です。

このように英語熱が深刻なのに、政府もマスコミも企業も学校もその過ちを正すどころか、ますます英語偏重へと学生と国民を追い込んでいます。

学生も保護者も大統領も英語だけに「希望」を抱いている有様です。英語の熱病を利用してお金を稼ごうとする新聞や雑誌、塾が増える一方です。

また、ハングルで書いた論文は評価が低く、英語で論文を書いた教授や学校は優秀だと評価し、大学教育を英語で縛りつけています。英語で論文を書いて国際学術誌に載れば、1億ウォンの褒賞金を与え、大きな加算点を付与する大学があるなかで、ハングルで論文を書こうとする人が果たして何人いるでしょうか。

南朝鮮ではハングルで論文を書く人は「敗北者」になるのです。

このようなことが続けば、ウリマルは南朝鮮で学術研究や文化を創造する言語としての地位を永遠に失うことになるでしょう。

ウリマルは民族の魂であると同時に、その民族と文化を特徴づける重要な表徴の一つです。

英語だけに没頭することはウリマルを踏みにじることであり、民族の精神と民族性を汚すことです。

ハングルで優れた学術論文や文学を書き、科学技術と文化を発展させるとき、ウリマルは国と民族の未来を切り開く力強い武器となります。

【プロフィール】1970年、朝鮮大学校文学部卒業。同校で48年間勤務。文学部及び文学歴史学部学部長、朝鮮語研究所所長を務める。東京外国語大学、関東学院大学、京都造形芸術大学で非常勤講師を歴任。現ハングル能力検定協会相談役。朝鮮民主主義人民共和国教授、言語学博士。

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