在日本朝鮮文学芸術家同盟

〈民族教育と朝鮮舞踊10〉「在日朝鮮学生中央芸術競演大会」

《朝鮮新報』2021.11.06 

〈民族教育と朝鮮舞踊10〉「在日朝鮮学生中央芸術競演大会」

第1回の「在日本朝鮮初・中・高級学校学生中央芸術競演大会」の模様(1963年)

舞踊部(ソジョ)活動の大きな目標

「在日朝鮮学生中央芸術競演大会」は今年で53回目を迎えた。1963年に第1回が開催され、65、66、74、76、78年度は中央大会を行わず、地方大会のみであったり実施されなかったりしたこともあった。昨年度もコロナ禍のため、各地方での発表会形式であった。

在日朝鮮人の芸術競演は1950年代から始まった。朝聯では40年代後半から全国文化部長会議や中央芸術学院などを通して、文化宣伝隊の育成や芸術部門の教員養成を強化し、文化サークルなどを通じて同胞たちに対する啓蒙文化運動を推し進めていった。その結果、53年には日比谷公会堂で全国音楽コンクールを開催し、55年には祖国解放10周年を祝って、7500余人の同胞たちが集まってノレチャラン(歌自慢)、各地域サークル競演などを行ったという。57年3月には民青(青年同盟)結成10周年を記念しての競演が豊島公会堂で行われ、5時間にわたり熱演が繰り広げられた。同年7月には女性同盟結成10周年芸術競演も行われ、各県から選抜された同胞女性たちがサークル、または個人で参加した。58年には共和国創建10周年を祝って文化体育の各種イベントが催され、芸術競演大会は地方予選を経て開催されるほど大きく発展していった。

芸術競演大会は主に8・15祖国解放、9・9共和国創建の国家的祝日を記念して開催された。60年代から90年代初期まで一般、青年、学生、歌舞団の部門に分かれて盛んに行われ、朝鮮信用組合の職員や総聯傘下団体及び事業体イルクンたちの競演大会等も行われていた。

「在日朝鮮初中高級学校学生中央芸術競演大会」が正式にカウントされ始めたのは1963年からである。学生時代の情操教育の重要性についての主席の教えに沿って、民族教育においても情操教育を強化し、特に民族的情緒と芸術的素養を高めることを競演大会の目的とした。11月7,8の両日、総聯中央会館や久保講堂、大田区民会館で行われた第一回大会には、六つの地域予選で1等になった115組、2千余人の学生たちが声楽、器楽、舞踊、演劇部門に出演し、1等入賞者の発表会も行われた。その後、音楽舞踊叙事詩や祖国での伝習、文芸同の活動などにより芸術的水準も高まって行った。

1985年度からは1、2、3等賞としていた評価法を金、銀、銅賞に変え、この年から大阪と東京での隔年開催になった。規模の拡大により口演部門は独立し、ピアノ部門も91年度からピアノコンクールへと発展して行った。97年度から初級部の中央競演はなくなり、四つの地方別ブロックでの競演となった。

舞踊部門には初期から大勢の学生たちが参加し、日頃の部活の成果を競った。朝鮮民族舞踊基本や朝鮮児童舞踊基本は、60年代初期に基本動作が普及すると同時に課題として出され、これにより全国的に統一された朝鮮舞踊の基本を習得し競えるようになった。90年代には基本動作部門が設けられ、各賞も与えられた。また91年度からは、祖国の名作を基本とする既成作品部門を新設した。それまで課題は基本動作であり、創作作品しか参加できなかった。既成部門を出すにあたっては反対意見もあった。それは舞踊教員たちが創作をしなくなり、安易に既成作品ばかりを出すのではないかと危惧したからである。既成部門を設けた大きな理由は、祖国の舞踊作品が国家的な作品審議委員会の厳しい批准を経て舞台に上げられている完成度の高い朝鮮舞踊であり、そのような素晴らしい作品を踊ることによって、学生たちの技術・技量や民族的情緒を高めることができるからである。もう一つの理由は、舞踊教員たちに創作の労苦が強いられていたからである。舞踊教員たちは授業とクラス担任を受け持ちながら、課外活動である舞踊部(ソジョ)を指導しているのであり、プロの按舞家ではない。創作の場合、教員の舞踊専門知識や技量のみならず、芸術的発想とセンスまでも問われる。既成作品をこなす過程で舞踊作品の主題の決め方、構成の練り方や舞踊動作の創り方、構図の取り方まで自然と身についていくことから、新部門は設けられた。

2006年(左)と2019年の「在日朝鮮学生中央芸術競演大会」プログラム

競演大会の審査も時代と共に改善されていった。初期は文芸同中央・崔東玉副委員長が審査委員長を務め、歌劇団の芸術家たちを中心に地方競演を回りながら選抜方式で行っていたが、92年度からは朝鮮大学校の音楽、舞踊教員が審査委員長及び各部門の責任者となった。この措置は、芸術面だけではなく教育的な見地からの審査に重点を置いたからである。現在競演大会は、学生たちの美的情操―特に民族的情緒と音楽舞踊的創造能力を養い、音楽授業と課外活動(朝青,少年団)の一環としての芸術部(ソジョ)活動を活性化させる貴重な場となるように行われている。また、地方競演も充実し、学父母をはじめ大勢の同胞たちの関心の中で行われている。

私は78年度から舞踊部門の審査に携わり92年度からは審査責任者をしているが、技術を競うだけでなく、学生への教育・教養的意義を重要視し、有能な人材育成の大切な過程であることを認識しながら、年間を通しての部活動の総仕上げになるよう心を砕いている。

競演の舞台に繰り広げられる一つひとつの作品には学生たちを取り巻く社会情勢や学生自身のアイデンティティー、人生観までもが溶け込まれている。学生たちを立派に育てようとする先生方の献身的な指導の下で創られる在日朝鮮学生の生活と感情・情緒を表現した作品には、汗と涙にまみれながら修練を重ね、集団の中で成長していく学生たちの協同作業が反映され、それはまさに美しい「青春」そのものとなっている。

朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)

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