在日本朝鮮文学芸術家同盟

民族教育と朝鮮舞踊24〉舞踊教育の発展のために―新しい舞踊教材と舞踊教員講習―

〈民族教育と朝鮮舞踊24〉舞踊教育の発展のために―新しい舞踊教材と舞踊教員講習―

《朝鮮新報》2023.02.10

舞踊教育の教材

舞踊教育の教材(上段=左から初級部用「学生少年舞踊基本」、中級部用「朝鮮舞踊基礎動作」、高級部以上「朝鮮舞踊基本動作」各DVD・CDセット。下段=左から初級部、中級部、高級部以上の解説教材)

民族教育における舞踊教育の今後を展望すると、いくつか課題がある。何よりも舞踊ソジョ(部活)に対する舞踊教育理論の確立、実践的な方法論の研究が必要であろう。民族教育の中での舞踊教育は外での習い事とは違い、学校教育(朝青・少年団課外活動)の一環であり、他に前例がない主体的で独創的な教育であるため、その研究がとても重要になる。また、初級部から大学校までの各校種別、地域別指導を体系化することも必要である。

舞踊教育教材の充実化

1960年代初期に「朝鮮民族舞踊基本」、「朝鮮児童舞踊基本」(共に崔承喜著)が普及され、71年には初・中級部のための「学生少年舞踊基本」、73年にはマンスデ芸術団の「舞踊基本動作」(映画)が普及された。85年には、科学教育映画「学生教育用朝鮮舞踊基本-基礎動作編」が祖国から送られてきた。そして86年と97年には文芸同舞踊部の基本動作動画資料が、97年には「朝鮮舞踊基礎動作」(1)(2)が制作された。基礎動作と基本動作を海外同胞が習得するための訓練集として、05年に「オルシグ」(1)(2)(3)が普及され、(1)は初級部、(2)は中級部、(3)は高級部以上の教材として10年間使われた。2013年には、「朝鮮民族舞踊基本」(58年、崔承喜)を復元・整理した「朝鮮民族舞踊基本動作」(2011.11、キム・ヨンギル、パク・リョンハッ出演)が普及された。

朝高舞踊指導教員講習会。実技講習を終えて (2022, 7・朝鮮大学校)

この間、初・中・高級部の教材は何度か変遷してきたが、民族教育の現状とウリハッキョの児童・生徒たちの年齢心理的・運動能力的水準に適合した基礎・基本動作が求められた。総聯中央教育局と協議した結果、今までの朝鮮舞踊の基本に徹底的に基づきながらも、世代交代や民族教育の実情に合わせた基礎・基本動作の教材を3年かけて作ることにした。

17年7月、高級部の教材である「朝鮮舞踊基本動作」(12動作)について、今までの基本動作を整理し、金剛山歌劇団と朝鮮大学校との協賛で動画を撮った。その際、伴奏音楽(カヤグムとチャンゴ)は05年の教材(朝鮮民族音楽舞踊研究所制作)を使った。また示範動作は黄裕順氏(前金剛山歌劇団舞踊手)が演じ同年、高級部舞踊教員講習会で普及された。

17年8月には祖国で初級部用「学生少年舞踊基本」(予備動作と15動作)を撮影した。伴奏音楽は、16曲中13曲を、初級部音楽教科書に掲載されている曲に一新した。ピパダ歌劇団の作曲家が編曲し、カヤグム、チャンゴ、チョッテ、高音チョッテ、チャンセナプの民族楽器とピアノで演奏録音した。舞踊動作を整理し、民族楽器が奏でる音楽を、児童たちが楽しみながら身体を作り、運動能力を高め、舞踊の基礎も備えられるよう配慮した。なぜなら現在、初級部の児童らの中にはスポーツと芸術の部活動を両方する対象が多いからである。この「基本」は音楽だけを聴いても素晴らしい教材であった。平壌学生少年宮殿のキム・ウンソン按舞家と動作を創り、11歳の児童2人に練習をさせて撮影し、18年4月からこの教材に統一した。

近畿地方舞踊教員講習(2019,7・初級部教員)

中級部は18年9月、伴奏音楽は朝鮮民謡を主とし、初級部同様ピパダ歌劇団が編曲、民族楽器を用いて演奏・録音した。動作は、朝鮮舞踊基本をより正確に踊るための基礎をしっかり備えていけるように構成し、日本からデモ録画を事前に送って、それをチョン・へオッ先生が指導した平壌第2音楽学院の生徒2人(16歳)が交互に演じた。初・中級部の教材は同年代の児童や生徒が演じることによって、よりイメージしやすいように作った。19年4月からは、この「朝鮮舞踊基礎動作」(15動作)で統一している。20∼21年にかけて、各動画の解説教材(朝鮮大学校出版部)もすべて揃えた。

在日舞踊教育において、もっとも大切なのは朝鮮民族舞踊の基本を教えることである。基礎・基本動作の教育は、これからもしっかり行わなければならない大原則となる。

舞踊教員講習

中四国・九州地方初・中級部舞踊教員講習(2022.7)

一方、舞踊教員のための講習会を1992年から30年間、毎年行ってきた。(2021年、高級部だけはリモートで実施)。教材がそろっても、それを持って教える教員たちの資質を高め、舞踊教育に対しての原則と方向性が一致されなければならない。

舞踊教員の資質向上のために行った講習会(毎年85∼90名参加)は、地域別、校種別に講義や実技などを交えた方法で行われた。初期のころは芸術競演大会の円滑な進行のために行われたが、この間に舞踊教育の目的や初・中・高級部の到達目標(教養・舞踊知識及び実技能力目標)なども整理した。指導方法や指導結果についての教育研究発表、経験交換や示範指導など内容も充実し、その結果、舞踊教員たちのネットワークも構築された。22年現在、舞踊教員の96%が朝鮮大学校卒業生である。

10年前からは、東日本、東海・北信、近畿、中四国・九州の4つの地域での初・中級部別講習、高級部は朝大での講習(1泊2日)を行っている。講師も朝大教員や金剛山歌劇団の指導員、舞踊専門家たちなどが務めている。また各地域では、児童・生徒たちの合同練習など多様な方法で水準を高めている。近畿地方の高級部3校の合同練習も5年間行われ、技術面と共に生徒同士の交流を深めてきた。

大阪・京都・神戸朝高舞踊部合同練習 (2016.7)

舞踊教員たちは、授業や生徒指導と共に、課外活動であるソジョ(部活)を通して、児童・生徒たちが知・徳・体を兼ね備えた立派な朝鮮人としての自覚と矜持を持てるよう日々絶え間ない努力を重ねている。このように献身的な教員たちの存在があり、民族的情緒と感情表現、しなやかで強靭な身体、心を一つに団結する精神が育てられているのだ。

民族教育の発展と、児童・生徒たちのために労を惜しまない教員たちがいるかぎり、異国の地でも朝鮮民族舞踊の代は引き継がれ、在日舞踊活動は発展していくことであろう。

朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)

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