〈民族教育と朝鮮舞踊21〉朝鮮大学校創立60周年記念大祝祭 開幕ステージ

《朝鮮新報》2022.11.03

〈民族教育と朝鮮舞踊21〉朝鮮大学校創立60周年記念大祝祭 開幕ステージ

278人の開幕舞踊-「駈け出そう未来へ」

朝鮮大学校創立60周年記念大祝祭 開幕舞踊(2016.5.29)

2016年5月29日、青く澄み渡った空の下、7千人の同胞と卒業生、学生たちの熱気と興奮の中で朝鮮大学校創立60周年記念の大イベントが同校の中庭(アンマダン)で盛大に行われた。この時、大いに話題となったのが、大型仮設舞台で東京学区のウリハッキョ初級部・中級部の舞踊部と日本各地の朝高舞踊部、そして朝大舞踊部と卒業生たちが朝大の8つのカラフルな学部Tシャツを着て、シンガーソングライターであるFasun(07年教育学部音楽科卒)の歌に合わせて躍動的な舞踊を繰り広げたことである。

在日朝鮮同胞の民主主義的民族教育の最高学府、祖国の惜しみない支援と同胞の熱望と努力の結晶である朝鮮大学校が創立されて60年。異国の地で民族差別やあらゆる困難を乗り越えて迎えた節目を祝い、朝鮮大学校が成し遂げた業績とこれからの未来像を特色ある記念行事によって示すことで、卒業生や同胞に力と勇気を与えようと、実行委員たちは創意工夫を凝らした。

開幕舞踊に出演した朝大舞踊部卒業生たちと一緒に

創立60周年イベントは、記念集会や公演などの行事と、卒業生や同胞のための記念大祝祭(野外)で2日間行われることになった。多くの卒業生や同胞が祝賀ムードを味わえるようにするためにはどうしたらよいのか、特に仮設舞台での催し物に実行委員会事務局の担当者たちは頭をひねった。各地から集まる多くの人々の期待に沿えるよう、卒業生たちの意見や要望も参考にすることになった。

2016年1月、大祝祭の企画担当者は朝大舞踊部のOGである鄭映心(93年文学部卒)、金善恵(95年政治経済学部卒)と意見交換をした。そして、初級部から高級部まで各60人ずつ、朝大生と卒業生で60人の総勢240人が8つの学部Tシャツを着てオープニングで踊ったらどうか、とのアイディアが出てきた。その話を聞いた私は、今までにないユニークな発想であり、実行可能性も充分ある、初級部の児童から朝大卒業生に至るまで「継承」、「代を継いで」朝大の60周年祝典に華を添える一大パフォーマンスになりえると確信した。曲はモランボン楽団の「駈け出そう未来へ」。民族教育100年に向かって駈け出そう、という内容に歌詞を変えることにした。そして、すぐ準備に着手した。

先ずは参加者の募集である。大祝祭には日本各地の朝高生たちも集まるので、各朝高舞踊部から参加希望を募った。するとわずか2日で、予定の60人を超える希望者が集まった。初級部と中級部は、東京朝高学区の舞踊部員として参加希望を募った結果、1校を除く12校が出演を希望した。朝大舞踊部はOGたちの参加数を見て決めることにしていたが、卒業生たちはお互いに声をかけあって30人参加することになり、朝大からは1,2年生を中心に30人が出演することとなった。

「駈け出そう未来へ」は初・中・高・大・OGと各1節ずつ踊り、リフレインで全員が踊ることにした。歌詞と校種に合わせ、初級部はチアリーダーたちがよく使うポンポンを持って、中級部はソゴ(小鼓)、高級部はショール、朝大生は手に花をつけて、OGは何も持たずに踊ることにした。各節ごとの振り付けを李京姫(80年師範教育学部卒)、鄭映心、金善恵と私とで分担して創り、動画を撮った。その動画と舞台での構図を参加校に送り、各校で練習するようにした。

朝鮮大学校創立60周年記念大祝祭のポスター

私たち4人は、小道具に用いるポンポンやショールを作ったり、初・中級部の児童たちが頭につける花を作ったり、8色のTシャツのサイズ分けなど準備に追われた。当初はぶっつけ本番でする予定だったが、初・中級部の舞踊教員から大勢の児童・生徒たちが交互に仮設舞台で踊るにはリスクがあるので、事前に合同練習をしたいとの申し入れがあった。教育現場ならではの提案であった。すぐに東京第一ハッキョの体育館で初・中級部の合同練習が行われたのだが、忙しい教員たちが率先して組織してくれたことには頭の下がる思いだった。

開幕舞踊を踊る初・中級部の舞踊部児童たち

それもそのはず、各校の舞踊部指導教員たちは全員朝大卒業生である。合同練習と当日に舞台袖で教員たちが、児童たちに事故が起きないよう見守ったことにより、これほどの大人数が舞台に立ってもスムーズにパフォーマンスを行えたのだった。勿論、舞踊教員たちも出身学部のカラーTシャツを着て児童・生徒たちを指導した。朝高生の中には、こんなに多くの人の前で、他校のトンムたちと交わりながら大人数で踊ったことはなく、嬉しくて感無量だと感想を述べる生徒もいたし、その日は一日中、学部Tシャツを着て祝祭を楽しんだ生徒たちも多かった。9歳から62歳までが同じ舞台に立って踊る光景は、まさに最高学府・朝大ならではのものであり、それこそが民族教育、舞踊教育の成果に他ならない。

開幕舞踊を踊る朝大舞踊部学生たち

卒業生たちは、大学生時代に戻ったみたいでとても楽しく、また朝大卒業生としても感慨深いものがあると話していた。

この大祝祭での開幕舞踊は、東京朝高学区の初級部79人、中級部64人、日本各地の朝高舞踊部75人、朝大生30人、舞踊部卒業生30人の計278人が舞台で踊り、舞台には立たなかったが児童・生徒たちを指導し、見守った舞踊教員25人が参加した「空前絶後の大群舞」であった。民族教育を通して育んだ母校愛、舞踊愛に満ちた舞踊部卒業生や朝大生、児童、生徒たちの姿はとても微笑ましく感動的であった。

開幕舞踊に出演した278人での記念撮影

7千人の観衆たちは、この開幕パフォーマンスに民族教育の明るい未来を確信したことであろう。朝鮮大学校が60年の歳月をかけて打ち立てた輝かしい金字塔の一つである。

朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)

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