4月の平壌を訪ねて/李裕和

《朝鮮新報》2014.06.24

街を彩る薄桃色のあんずの花

5年前の祖国訪問以後、シヌ(姑妹)やオルケ(弟嫁)ら4人の親族の不幸が重なり、そのことがずっと気になっていた。どうしたことか年明けから夢枕に親族が代わる代わる現れるようになり、私は新学期の書芸教室をスタッフにお願いし、祖国訪問を決意した。7度目にして初めての春の訪問であった。

書芸 李裕和 「ピョンヤンを訪ねて」

空港から市内に入るや、街路を彩る薄桃色のあんずの花が目に飛び込んできた。まるで日本の桜並木のようで、2度、花見を味わうように気分が浮き立った。案内員・禹さんの「在日同胞がよく桜と間違えますよ」という話にあるように、幹の模様が異なるものの花の姿はそっくりである。ちなみにこのあんずの実は小さくて食用には適さないという。

ホテルに着くと姉が私を待っていた。打ち合わせの日に姉の家に行き、予め船便で送っておいた餅粉と乾燥ヨモギ(墓に向う道端の植物を注意深く見たがヨモギはあまり生えていなかった)と、姉が準備してくれた緑豆・小豆を煮て、姪や嫁たちと二種のお供え餅をつくり無事墓参を終えることができた。

石版の顔写真に故人を偲んだ「愛国烈士陵」では、多くの烈士の名を刻んだ屏風型の黒大理石を囲む丘に咲き乱れる濃黄色のれんぎょうの花の群れに目を奪われた。同行の歌人で高麗書芸研究会の申副会長が「まさしく黄泉の国ね…」と感嘆の声をあげていた。

世界遺産の都、開城市内の名所旧跡を観た後、五冠山の麓に聳え立つ霊通寺に足を運んだ。

スニム(僧侶)のウリ式の高低のある般若心経の読経や、高麗時代の僧大覚国師=羲天の命日の法要に来る南の天台宗、発掘調査・復元に尽力した日本天台宗の話が興味深かった。晴れ渡る空の下、造られたばかりのハイウエイにつながる高台に登り春たけなわの霊通寺を見下ろすと、自ずと時調が生まれた。

春の訪問は特典が多い。「四月の芸術祭」の開幕公演では数十年振りに観る舞踊「雪が降る」に涙し、アカペラ五重唱「祖国賛歌」に胸が震えた。世界のアーテイストに混じって金剛山歌劇団の公演を平壌市民の喝采の中で観覧できたことも嬉しい限りであった(この時息子が偶然にも一員として舞台に立っていたので…)。

色めく花々のせいなのか、携帯電話を片手にパンツ姿で忙しく立ち働く若い親族たちの姿に接したせいなのか、新たな活力と息吹を肌で感じた2週間であった。

(日朝友好展運営委員、高麗書芸研究会常任理事)

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