試練に打ち勝つ力を〈文芸同〉/文芸同広島の李和枝委員長

《朝鮮新報》2021.12.30

ウリ文化芸術の力を信じて

コロナ禍の中でもスポーツ、芸術の力で試練に立ち向かう人たちからのエールを届ける。文化芸術活動の持つ力、可能性について文芸同広島支部の李和枝委員長に話を聞いた。(不定期でスポーツ、芸術の分野からのインタビューを紹介します)

●同胞らの手でなしえた成果

―コロナ禍での活動も2年目を迎えた

文芸同広島支部・李和枝委員長

尊敬する朴英美前委員長の後を継いで、文芸同広島の委員長に就任して3年。ここ2年間は感染症拡大の影響で正常に活動に行えず、とても歯がゆい思いを抱いている。でも、決してマイナス面だけではなく、この状況は今まで気付けなかった大切なことを教えてくれた期間でもあった。文芸同盟員や同胞たちは、ウリ文化芸術の力を信じ、できることを探しながら最大限の努力をしてきた。その過程で今後の活動につながる貴重な経験を積むことができた。

―昨年、広島では広島初中高チャリティー公演「飛翔2020」が成功裏に行われた

金剛山歌劇団、文芸同広島、広島初中高の児童・生徒・園児たちがともにステージに上がった。企画した当初はコロナ禍の開催ということもあり否定的な声も多く不安もあったが、約460人が公演を観覧し、盛況を博した。これもひとえに、困難な状況でも芸術を愛する同胞らの手で成し遂げられた成果だと思っている。

文芸同としては、公演を通じてコロナ禍で日頃の部活動すら満足に行えず、中央芸術コンクールなどの大会も中止となった子どもたちを輝かせたいという一心だった。

これまではウリハッキョの子どもたちと文芸同盟員たちが直接的に関わるという機会はあまり多くはなかったが、「飛翔」公演でともに舞台立つことができた。子どもたちは大人になっても文化芸術活動を行う先輩たちを見て多くを感じ取っただろうし。盟員たちにとっても、子どもたちと接する過程で、民族教育の大切さやそれを守っていく上での自身の役割を再認識するきっかけになったはずだ。今後もこのような子どもたちと関わる機会を積極的に作っていきたい。

―文芸同広島の活動について教えてほしい

文芸同広島では現在、舞踊部、器楽部、声楽部など部署ごとに定期的に集まり、練習や発表会などの活動をしている。委員長として就任した当初、みんなで楽しく活動できればいいなという考えを抱いていたと同時に、なぜこんなに人が集まらないのかという疑問も少なからずあった。副委員長をはじめとした先輩たちの力も借りながら、盟員数拡大にも力を入れている。そのなかで特に舞踊部では昨年の「飛翔」公演以降、新たに6人のメンバーを迎え入れ、11人の盟員たちで活発に活動を行っている。今後は朝大や朝高卒業生たちに積極的に声をかけ、活動の幅を広げていきたい。

●民族教育あってこそ

昨年行われた広島初中高チャリティー公演「飛翔2020」では、子どもたちと文芸同広島メンバーによるコラボ演目も披露された

―文芸同活動の意義をどのように捉えているか

3年間、委員長として活動する中で、文芸同活動に対する認識も徐々に変わってきた。特に、民族教育との関わりの中で強い意義を感じている。

今、文芸同広島のメンバーは全員がウリハッキョ卒業生だ。舞踊や歌、楽器など、小さいころからウリハッキョで民族芸術に親しんで来たメンバーが、大人になり、家庭を持っても文芸同活動を通じてそれを続けている。文芸同という組織があるからこそ、子どもから大人まで同胞たちがウリ芸術、そして同胞社会と関わり続けることができる。同胞たちが民族教育を通じて培った民族心、朝鮮人としてのアイデンティティー、朝鮮文化を愛する気持ちを変わらずに持ち続けるようにすること。これが文芸同活動の大きな役割だと思う。

近年、同胞社会では、朝鮮の伝統芸術に触れる機会が失われつつある。1年に一度も民謡や民族楽器の演奏を聞かなかったり、朝鮮舞踊を見ないという同胞も多い。これからは民族伝統芸術に触れる機会をより意識的に作っていかなければならない。

●もうスタートラインには立たない

文芸同広島では舞踊部、声楽部、器楽部を中心に活動を活発に行っている(写真は昨年2月の文芸同広島新年会)

―活動における自身のモチベーションは

同胞たちに恩返しがしたいという気持ちを常に心に抱いている。ウリハッキョに通っていた幼い頃から司会などで舞台に立ち続け、いつも地域同胞たちに支えられてきた。そうした人たちが、今も自分を応援し、励ましの言葉をくれる。同胞たちに少しでも喜んでもらいたいと思って活動している。そして、自分はもちろん、盟員や公演を見てくれる同胞たちがウリ芸術を通じて少しでも豊かで潤いのある人生を送ってほしいと願っている。

―この間の活動で得た経験、教訓は

やればできるということ、やってみてはじめて得るものがあるということだ。コロナ禍で活動が著しく制限されるが、そのなかでもできることがある。みなで意見を出し合い、議論し、実行する。そのなかで出た成果と課題を見つめなおし、より前へと前進する。広島では昨年の「飛翔」公演でそのことを証明することができた。コロナ禍で「できるのか、できないのか」という議論はもうしない、スタートラインにはもう立たない。やれば必ずできる。それが前提だ。今後もそうして活動を展開していくつもりだ。文芸同広島は再来年に設立25周年を迎える。この間の経験をそこに向けて生かしていきたい。

●価値示し、豊かな同胞社会を

昨年行われた広島初中高チャリティー公演「飛翔2020」では、子どもたちと文芸同広島メンバーによるコラボ演目も披露された

―コロナ禍で芸術活動の価値、在り方が改めて問われている

芸術は人生に「潤い」を与えてくれる。今の自分があるのは間違いなく、ウリ芸術があったおかげ。生き方や考え方などに多大な影響を及ぼし、自分の人生を形成ししているのが芸術というものだ。

コロナ禍で芸術活動が「不要不急」であるなどの声もある。もちろん、そういう人もいるだろう。しかし、芸術活動を行う当事者たちが、自分たちの価値や意味を絶対に見失ってはいけないと思う。一か所に集まって公演や練習ができなくても、活動の方法はいろいろある。

なぜ、自分たちが芸術活動をするのか。さきほども述べたが自分にとってウリ芸術は人生を形づくる大事なもの。技術うんぬんではなく、同胞芸術人としての思想やプライド持ち続けることが大切ではないか。同胞たちから求められ、その期待に応え続けなければならない。

―各地で芸術活動を行う同胞たちへエールを

先ほども述べたが、自分たちの価値を見失わず、それぞれの活動に誇りをもってほしい。民族教育の発展、同胞社会の代を継いでいくためにはウリ文化芸術は必要不可欠だ。コロナ禍の中、まだまだ予断を許さない状況は続くが、子どもたちの未来のために、豊かな同胞社会のために、同胞芸術人たちが力を合わせともに頑張ろう。芸術の力で、同胞たちに勇気と感動を与えていこう。

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