在日本朝鮮文学芸術家同盟

〈民族教育と朝鮮舞踊 1〉舞踊教育の意義と役割

《t朝鮮新報》2021.01.30

連載「民族教育と朝鮮舞踊」は月1回掲載します。朝鮮学校において大きな位置を占める朝鮮舞踊。その発展のために長年努めてこられた朝鮮大学校舞踊教育研究室の朴貞順室長が自身の体験と実践を通して、民族教育における朝鮮舞踊の役割と意義についてつづっていきます。

一昨年、私は朝鮮大学校での44年にわたる専従教員を定年退職し、朝鮮大学校舞踊教育研究室室長および非常勤講師として引き続き舞踊科目の授業と舞踊部指導講師としての活動を始めた。朝鮮学校での民族教育はもちろんのこと、朝鮮舞踊を通して行われる舞踊教育の役割と意義については感慨深いものがある。

昨年の芸術発表会

コロナ禍の発表会

世界各国で新型コロナウイルスの感染被害が拡大している現状の中で、異国の地で行われている民族教育も多大な影響と制約を強いられた。半世紀以上の歴史を誇る「在日朝鮮学生芸術競演大会」も昨年は3つのブロックに分け中高級部生に限っての芸術発表会形式で行われた。舞踊ソジョ(部活)も7月に入ってから制限付きの活動しかできなかったが、学生たちはめげることなく発表会を目指して練習を重ねた。各校2演目まで発表できる舞踊部の学生たちは主に重舞、群舞など53作品を披露し、34の創作舞踊、19の既成舞踊作品を舞台いっぱいに繰り広げた。ビデオ審査の独舞には、初中高合わせて130余人がエントリーした。

日本で生まれ育っても家族や同胞社会、祖国の温かい愛情と配慮の中でウリハッキョに通い朝鮮舞踊を踊れる喜び、祖国統一を願う民族の一員としての自覚、民族差別や嫌がらせの中でも朝鮮人として今を生きようとする姿、また民族の伝統である朝鮮民俗舞踊を生き生きと踊る学生たちのパフォーマンスは観る人の心に響き、深い感銘を与えた。1978年度から芸術競演大会の審査をしてきた私であるが、コロナ禍での社会的不安と命の危機に加え、高校無償化裁判の不当判決や幼保無償化の除外にいたるまでさまざまな民族差別を受けながらも屈することなく自己のアイデンティティーを確立し、民族の歴史と伝統と魂が込められた朝鮮舞踊を誇らしく踊り、表現する学生たちの姿に目頭が熱くなった。そして民族教育がどんなに大切なものなのか、朝鮮舞踊を教育する意義がどれだけ大きいか改めて考えざるをえなかった。

昨年の芸術発表会

舞踊教育の重要性

民族教育の目的は、日本で生まれ育った同胞子女たちが祖国と民族を愛し、正しい歴史認識を持ちながらも新しい時代の要求に沿った先進科学と技術、民族情緒をはじめ民族性を兼ね備えた在日同胞社会の立派な担い手となるよう教育することにある。民族教育の一環である舞踊ソジョも、その活動を通じて民族自主意識と豊かな芸術的情操、健康な身体と集団主義精神を養う有力な教育手段としての位置と役割がある。

民族の悠久な歴史とともに時代を越えて脈々と受け継がれてきた民族舞踊は、民族の固有な生活情緒と風習を何よりも集中的に、直感的に見せてくれるので他のどの芸術よりも民族的特性を帯びている。そのため古くから受け継がれてきた民族舞踊を習得し、舞踊動作(律動)や民族音楽、民族衣裳、小道具のような形象手段を使って表現することは、民族の歴史と文化を現在の自己の感情や情緒に組み込みながら他者に伝える意思伝達(コミュニケーション)の手段として最も適しているのである。

また、舞踊は創造的、表現的な行為であるために人の心と身体を解放させるだけではなく、自己の意志と感情を表現することによって「自分自身」を知り、「集団」や「社会」との関係を理解させてくれる。舞踊を観る人、創る人、音楽を奏で衣裳や小道具、舞台背景を作る人たちとの意思疎通や連帯感、一定の空間で共に踊る人たちとの協調性など集団の中の自己を認識することができる。

民族舞踊のような民族芸術による教育は民族的情緒と感情を育み、民族の優秀性を知り民族的自負心や矜持を高める力強い手段である。朝鮮舞踊はとても魅力的で人を惹きつける優れた舞踊だ。民族舞踊を教育し広めることはそれ自体が民族性を守り活かしていく自己主張でもある。

祖国解放後、日帝の植民地政策によって失われた民族意識を啓蒙するために行われた民族教育における舞踊教育は、世代交代の中、ますますその重要性を高めている。民族性を守り受け継いでいくため民族自主意識の基礎となる民族的情緒や感情を豊かに持つばかりではなく、それを自分自身の心と身体で芸術的に表現する創造的能力を身につけることができる舞踊は、その過程で美的価値観、忍耐力、強い意志、団結力などを育む最も力強く、合理的で効果的な教育手段だ。

民族教育が始まって75年、時代が変わっても絶え間なく行われてきた民族教育、舞踊教育はまさに世界に類のない主体的で独創的な教育だ。

民族教育においての舞踊教育は民族舞踊―朝鮮舞踊が基本である。在日同胞の歴史や生活、感情情緒、志向や生き様を朝鮮舞踊で形象し、創造していこうとする伝統が今もしっかり根づいている。私はそのことを確信した。

朝鮮舞踊教育は、祖国と民族の発展に寄与し、日本をはじめ国際社会でも活躍できる、知徳体を兼備した有能な人材、真の朝鮮人を育てるための役割を担っているのである。

(朴貞順・朝大舞踊教育研究室室長)

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