在日本朝鮮文学芸術家同盟

蔡峻展

2002.12.2-12.14

「蔡峻―強靭な批判精神、孤高の人」

蔡峻は在日1世美術家の中で最も重要な 人である。その作品は卓抜な造形力と想像力でとても1926年生れと は思えない作品を作り続けている。

彼は若い頃は画家を目指したが生活のために始めた漫画によってその才能を開花させ研ぎ澄ませてきた。 特に長く新聞に連載された政治風刺漫画は読者に風刺の面白みを伝えただけにとどまらずその印象深い独特な造形と鋭い批判精神で堪能させた。その漫画は日本人漫画家の中でも評価が高く手塚治虫なども絶賛している。

漫画と平行して絵画作品の創作もおこなってきたが二つの仕事は相互に良い刺激を与え続け巨大で孤高な画家を誕生させた。 それは日本の美術界にも韓国にも例を見ない作家となった。こういう作家を生むことは在日コリアンの美術界の特徴的なことと言えよう。日本社会の民族差別、社会的抑圧、冷戦構造下の母国の分断と代理戦争のような同胞社会の対立は在日同胞の世界観、人生観に深刻な影響を与えた。それは自分が居る状況一様々な力や流れから覚醒した視線、視野、視力を養うことになった。 独自の批判精神に裏打ちされた作家達を誕生させる背景となった。

蔡峻の出品作[ビー 玉] (2001年作oil painting)は本来のこの作家のフィールドに戻った作品である。若い女性の姿は同胞でありコリアンであり時として自己も含めたこの時代を生きる人々の象徴である。ビー 玉は硝子で作られた玉で子供の遊具である。 日本ではよく真実を見分ける事の出来ない人に「君の目は硝子玉か?」などという。この絵は批判精神を失った現代人への痛烈なアイロニー と受け取ることが出来よう。 だからといってグロとしないところがこの作家の限りない人間への愛情を感じられるところである。

美術評論家 宋真一

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