〈民族教育と朝鮮舞踊14〉平壌音楽舞踊大学の通信教育②―舞踊学部及び博士院

《朝鮮新報》2022.03.21

ハイレベルな通信教育への道を切り拓く

平壌音楽舞踊大学舞踊学部朝鮮舞踊学科 卒業試験を終えて(2002.2、写真左から金星華研究院生、リ・インスㇰ教授、李成禮研究院生)。

1984年から始まり1990年に制度化された平壌音楽舞踊大学の通信教育(朝高生対象)は、多くの才能ある人材を輩出してきたが、在日同胞社会での主体性と民族性の涵養のためには、朝鮮舞踊においてもハイレベルな専門家、指導者が必要とされた。それを可能にしたのが、専門部より上の平壌音楽舞踊大学舞踊学部・博士院課程である。

朝鮮大学校には在日同胞社会のみならず、日本や国際社会の幅広い分野で活躍する有能なスペシャリスト、学者、技術者、資格取得者、芸術家などを育成する研究院(大学院相当)が1974年から設けられ、総合研究科、専習科、予科がある。総合研究科には前期(2年、修士課程相当)と後期(3年、博士課程相当)があり、社会科学、自然科学、人文科学の各専攻がある。特記すべきは、共和国の各大学への留学制度を実施していることである。

朝大では1997年から研究院に朝鮮舞踊専攻課程を設ける準備をしていた。在日同胞の構成において3・4世が主流となった当時、新しい世代に民族自主意識を育む朝鮮舞踊教育はとても重要であった。民族教育の課外教育を見ると、ほとんどの学校に舞踊部(ソジョ)があり、多くの生徒たちが朝鮮舞踊を通じて民族性を養っていた。朝鮮舞踊が普及し、学校での部活が活発に行われており、理論実践的な指導のできる教員が必要であった。朝大で朝鮮舞踊の専門的な指導教員を養成することは、現実的な課題の一つでもあった。事実、朝鮮舞踊を踊る人は多いが、朝鮮舞踊教育のための理論や指導技術を体系的・専門的に学んだ者はいなかった。学校現場では授業と担任、そして専門的な部活の指導教員が求められた。朝大の教育学部に舞踊科目はあるが、舞踊学科など舞踊指導教員を専門的に養成するシステムはなかったので、祖国の支援が不可欠であった。

平壌音楽舞踊大学側との度重なる協議の末に、2000年度から朝大研究院生(朝鮮舞踊専攻課程)の同大学舞踊学部の通信教育(大学課程)が始まった。在日同胞社会での変化と世代交代が進む中で、民族教育と同胞社会における民族性を守ることが重要な課題となっている実情に鑑み、朝大研究院舞踊専攻学生たちが民族教育と愛国活動に貢献する民族舞踊教員、指導員として準備できるよう、平壌音楽舞踊大学通信教育体系で学ばせることが可能になった、という連絡が祖国から正式に送られてきたのだった。

平壌音楽舞踊大学校門、卒業証書を持って(2004.2、写真左から李美和、尹良栄、李奉仙研究院生)。

これは画期的なことであった。この制度により舞踊学部1期生として李成禮、金星華研究院生が2000年から02年まで、2期生として李美和、李奉仙、尹良栄研究院生が02年から04年まで通い、今まで5人が舞踊学部を卒業した。学部では3年間に、舞踊芸術論(24限)、朝鮮舞踊史(20限)、舞踊作品分析(20限)、舞踊表記(40限)、チャンダン(20限)、専攻・朝鮮舞踊(162限)、専攻・バレエ基礎(54限)を履修し、補講として舞踊教授法や創作の授業も受講した。卒業試験科目の舞踊芸術論と小論文、朝鮮舞踊(独舞2作品)に合格すると卒業証書(資格-舞踊家)が授与された。

研究院生たちのために人民芸術家のキム・ラギョン先生、学部長のカン・グァングッ先生、朝鮮舞踊教授のリ・インスㇰ先生をはじめ超一流の素晴らしい先生方が直接指導をしてくれた。もちろん道なき道を初めて切り拓いていくことは容易なことではなかった。制度も前例もなく、祖国には大きな負担ばかりかけることになる。特に舞踊においての大学課程や博士院課程は、誰も足を踏み入れたことがない未知の世界である。しかし、日本で生まれ育っても朝鮮舞踊を極めるためには、本場で直接教えを受けるのが最善である。研究院生たちは情勢が厳しい時も、空路での往来を余儀なくされても、朝鮮舞踊の最高峰の教育を受けたい、教育者・指導者としての資質を高めたい、という高い志を曲げることはなかった。祖国では研究院生のための授業や指導を最優先で行ってくれた。先生方はどんな時でも親身になって指導してくれた。そのありがたさに、私はいつも感謝の気持ちでいっぱいであった。祖国の配慮と先生方の力添えがあってこそ、ハイレベルな舞踊教育を行えたのだ。

1期生として舞踊学部を卒業した金星華教員(東京朝高)は、教育現場を経て再度研究院本科に入学、祖国の通信博士院に通い碩士(修士相当)論文を書いて学位を取得するまでになった。彼女は「学部と博士院の通信教育課程は誰も歩んだことがない道のりであったが、何よりも祖国の先生方の情熱的指導が私の背中を押してくれました。自信がなく心が折れそうなときも、やれば必ずできると最後まで信じてくれた祖国と先生方の恩恵に教育者として立派に報いたいと思っています。」と語る。2期生の李美和教員(大阪福島初)は、高級部は専門部に、朝大卒業後は研究院生として舞踊学部に通った。「ソルマジ公演をきっかけに、朝鮮舞踊を祖国で専門的に学びたいという希望を持っていたが、まさか舞踊学部で学べるとは夢にも思っていませんでした。民族教育での舞踊教育を教育的・専門的に行っていく使命感を持って、感覚的にも理論的にも精通することが、在日同胞社会に主体性と民族性を守り伝え続ける力強い手段となるということを学びました」と通信教育課程の意義を振り返る。

祖国は若い舞踊教育者たちに「高度な専門理論知識と指導技術能力」という力強くも大きな翼を授けてくれた。

朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)

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