朝鮮喜劇の笑いのしくみ探る/連続講座「朝鮮の大衆文化をひも解く」第4回

《朝鮮新報》2022.03.02

講師に金正浩学部長

朝鮮の喜劇について講演する金正浩学部長(提供=朝鮮文化研究室)

連続講座「朝鮮民主主義人民共和国の大衆文化をひも解く」の第4回が2月19日、「朝鮮の喜劇―笑いのしくみを探るー」と題して、オンラインで行われた。

この連続講座は、朝鮮大学校朝鮮問題研究センター朝鮮文化研究室と科研費基盤(B)「文化としての社会主義:北東アジアとDPRK」の共催で昨年7月に始まり、第1回は朝鮮の音楽、第2回は朝鮮舞踊、第3回は朝鮮の食をテーマに行われた。

連続講座の最後となる今回、朝鮮大学校文学歴史学部の金正浩学部長(朝鮮民主主義人民共和国功勲芸術家)を講師に招き、朝鮮問題に関心を寄せる多くの朝・日の市民が参加した。

金正浩学部長が主宰する在日朝鮮人劇団「アランサムセ」は1988年の結成以来、在日同胞社会を舞台にした作品とともに、これまで朝鮮の喜劇7作品を上演した。講演ではこの7作品を中心に笑いのポイントなどを解説しながら、朝鮮の喜劇の特徴や傾向などを探った。

講師は、朝鮮の戯曲すべてに一貫しているのは「喫緊の課題」で、経済と人民生活向上を素材にしていると説明。そのうえで、7作品のストーリーを、ポイントとなるセリフなどを用いながら一つひとつ紹介した。

例えば「熱き心」(1985年の作品、2009年に上演)には、怯えながら逃げる若い女性をつけ回す若い男性がいて、さらにその男性の後をつける女性が登場する。男性は靴職人で若い女性の靴のサイズが合ってないと心配し、その男性を追う女性は裁断師で男性のスーツが合ってないと心配するコントだ。

また、朝鮮でバスケットボールがとくに奨励されていた時期の作品である「バスケ選手」(1997年の作品、2009年に上演)では、ある工場で職場対抗バスケ試合が開催されるのだが、バスケにまったく興味がなかった主任が、試合結果が評価対象になると聞いて慌ててチームを作ろうとする。しかし選手不足で、バスケ経験のある妻が男装して出場するという流れだ。

講師はさらに、朝鮮の喜劇の元祖と評価されている「山びこ」についても紹介。これは1961年に創作され2010 年代にも再演されて大好評だった作品で、岩山を開墾して穀物増産を目指す新世代と現状に満足する旧世代の対立と葛藤を描いている。

講師は、朝鮮の喜劇に共通する構図として、時代の要求に敏感な新世代と既存の成果に満足する旧世代との葛藤が描かれていると説明。しかしそこでの批判は、否定的現象への同志的な批判であり、親しい人に対する助言、アドバイス的な意味合いが多いと説いた。

さらに、笑いの普遍性として誤解や錯覚、人間違い、言い間違い、恋愛対象の取り違えなどがあるとしたうえで、朝鮮の喜劇でも古今東西の文学、演劇で長らく用いられてきた手法を、経済建設や恋愛を絡めて縦横無尽に駆使して笑いを取っていると述べた。

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