〈民族教育と朝鮮舞踊 7〉初めての祖国訪問と舞踊教員講習

《朝鮮新報》2021.07.31

〈民族教育と朝鮮舞踊 7〉初めての祖国訪問と舞踊教員講習

「第10次教員祖国訪問団」のメンバー、下段左から6番目が金漢文団長、下段左から4人目が高創一副団長、下段右から3番目が筆者

10次教員祖国訪問団(1981.78)

民族教育における舞踊教育では、祖国の暖かい配慮と直接的な支援が不可欠であった。歴史的事実として祖国は、異国の地で民族の魂と伝統が込められた朝鮮舞踊を学び、舞踊を通して立派な人材に育つ在日朝鮮学生と教員たちに同胞愛に満ちた指導と惜しみない援助を与えてくれた。朝鮮舞踊の普及や教育のための教材や映像、資料などを送ってくれたばかりか、1974年からは金剛山歌劇団・地方歌舞団が祖国での公演などを行うたびに舞踊名作や新作などを伝習・創作してくれ、新入団員のための講習も行えるよう手厚く便宜を図ってくれた。87年からは文芸同舞踊部までも、舞踊専門家の指導を受けられるようにしてくれた。

70年代には代表団や祝賀団など、ごく一部の人しか祖国を訪問することができなかったが、共和国政府の関心と在日同胞たちの祖国往来の自由を勝ちとるための粘り強い運動の結果、79年からその道が大きく開かれ、80年代には教員代表団や朝大・朝高の学生たちが祖国を訪問できるようになっていった。教え子たちが先に祖国を訪問して、現場の教員がまだ祖国の地を踏めずにいることも普通であった。舞踊関係者でも、歌劇団や歌舞団など芸術団の公演や伝習は行われていたが、舞踊教員にはまだその機会が廻って来なかった。

講義を終えて。上段中央がキム・ラギョン先生、下段中央がチョン・ヨンイル先生、下段右端が筆者

私は81年の夏に、第10次教員祖国訪問団の一員として夢にまで見た祖国を初訪問できることになった。生まれて初めての祖国、本場の朝鮮舞踊を学べる感激、期待と感動が入り交じった胸の高鳴りは計り知れないものであった。

音楽、美術、舞踊の教員たちで構成された、特色ある第10次教員祖国訪問団の2カ月の日程には、参観と交流に加え、専門講習が含まれていた。朝鮮大学校美術科の金漢文先生が団長、音楽科の高創一先生が副団長、私は舞踊班の責任者として、平壌市内をはじめ白頭山地区や妙香山地区、元山及び金剛山、開城地区などの地方参観、交流や学習、また元山・ソンドウォンホテルに1カ月近く滞在しながら、初めて祖国の先生の舞踊指導を受ける貴重な体験をした。音楽の教員たちは吹奏楽や声楽等の指導教員が主なメンバーであったが、民族楽器の講習を受けた。美術教員たちは、油絵など各自専門分野は違ったが、朝鮮画を学んだ。

舞踊はというと、祖国で「舞踊教員」とは基本的に児童舞踊の教員を指すので、初期はメンバー構成やこちらの意図とは違い、幼児舞踊(幼稚園での舞踊)の教員を養成する教員大学の講師が派遣されてきた。ところが、団員は初・中・高級部の舞踊指導教員たちだったので、初めから講習内容がかみ合わなかった。舞踊教員たちの祖国講習自体が初めてだったため、行き違いがあるのは仕方がなかった。そのため、講習の後半には私が基本動作を教えることになった。そこで私たちは、学生少年宮殿の舞踊指導員やソルマジ公演創作集団、芸術団按舞家の講義や実技指導を受けたい旨を申し出た。祖国は私たちの熱意を真摯に受け入れて対応してくれ、キム・ラギョン先生(ピパダ歌劇団・按舞家)とチョン・ヨンイル先生(平壌音楽舞踊大学・朝鮮舞踊講座長)の講義を受けられるなど、講習は充実したものとなった。

講義をされるキム・ラギョン先生(右)とチョン・ヨンイル先生

チョン・ヨンイル先生は「舞踊技法」、「舞踊技法原理」や「舞踊教授法」などの舞踊専門書を何冊も執筆された舞踊理論家で、名作「降仙の夕焼け」を創作されたインテリジェンスに富んだ方であった。先生は、朝鮮舞踊の特性と創作法について分かりやすく丁寧に講義をされた。キム・ラギョン先生は、ご自身が創作された4大舞踊名作の一つである「祖国のツツジ」や伝説舞踊「金剛仙女」、民俗舞踊「三人舞」、独舞「トラジ」などの創作過程や、その過程にまつわるいろいろなエピソードなどをユーモアたっぷりに話された。「祖国のツツジ」は、その主題設定から完成に至るまで、金正日総書記が20数回も直接指導をされた際の数々の興味深い逸話や、はじめは11人に設定した仙女を、伝説通り8人にするよう指導されたこと、作品の最後に仙女たちが羽衣を落とすように振り付けた創作的意図など、私たちは自ら舞踊動作を交えながら話されるウリナラで最も高名な先生方の講義に聞き入った。この時に話された内容は今でも記憶に新しく、舞踊作品の分析評価や創作の糧になっている。

また祖国では、平壌学生少年宮殿をはじめ地方の人民学校・高等中学校の舞踊部、体育舞踊部などの授業参観や公演観覧、交流会なども行えるように手配してくれた。

初めてオモニ祖国の懐に抱かれ、朝鮮舞踊の本家本元で専門的な舞踊講習を受けられるよう、われわれ教員たちにあらゆるご高配をくださった、敬愛する主席と祖国への感謝の気持ちで胸はいっぱいであった。

朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)

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