「音楽の力」を再認識/大阪朝鮮吹奏楽団第39回定期演奏会

「音楽の力」を再認識/大阪朝鮮吹奏楽団第39回定期演奏会

《朝鮮新報》2021.12.01

今年で39回目を迎えた大阪朝鮮吹奏楽団(以下、楽団)の定期演奏会。出演者はもとより同胞たちは2年ぶりに開催される演奏会を待ちわびていた。客席に条件を設けるなど規模は縮小したものの、会場は100人を超える同胞らが駆け付けた。

大阪朝鮮吹奏楽団第39回定期演奏会が行われた

1974年に創立した大阪朝鮮吹奏楽団は、演奏をはじめとする幅広い活動を通し、これまで同胞社会の活性化と朝・日親善のための一役を担ってきた。

なかでも、一昨年までは、朝鮮学校の納涼祭や運動会での演奏を活発に行ってきた楽団。しかし昨年はコロナ禍で活動を全面的に休止し、団員たちは「途方に暮れていた」という。

「何かしら動きたかったが、コロナ禍で団員らのモチベーションは下がる一方だった」と、文慶植団長は振り返る。

今年に入ってもコロナの感染拡大は勢いを増し、文化活動においても自粛ムードが続いていた。しかし団員たちは、こんな時こそ音楽を通じて同胞たちと繋がろうと、演奏会の開催を決めた。

企画、選曲などすべて自身らで担った。開催の日程が2回も延期されるなど紆余曲折も多かったが、約2カ月のあいだ、団員たちは週に2回ずつ中大阪初級の校舎に集まり、着実に練習を重ねて作品を仕上げていった。

楽団では、同胞のみならず縁のある日本人もメンバーとして迎えている。今回の演奏会でも4人の日本人メンバーがともに出演。ほかに見ない同楽団ならではの個性も発揮された。

演奏会では、北南朝鮮、日本の楽曲など7曲が披露された。なかには、吹奏楽演奏ではおなじみの「音楽祭のプレリュード」や、許南麒詩人が手掛けた「子どもたちよ、これが私たちの学校だ(아이들아 이것이 우리 학교다)」など同胞たちに愛される作品も演奏され、客席からは拍手が途絶えなかった。

毎年、演奏会に足を運んでいるという姜時子さん(81)は「何度来てもレベルの高い演奏に感動する。今回も朝鮮の音楽を思う存分堪能できた」と満足そうに語った。独奏を手掛けた孫の金世怜さんの姿に「練習時間も短いなかでよく頑張ったと声をかけてあげたい」と目を細めた。

出演者らの思い

演奏会でとりわけ観客の好評を博したのは、指揮を執った朴守賢さん(41)作曲の「Garak Dance」だった。観客たちは、斬新で特徴的な音律と軽快なテンポ、そして朝鮮のチャンダンを感じられる演奏が耳に残ったとそれぞれ口にしていた。

朴守賢さんは、6年前から楽団の指揮者として舞台に立っている。朴さんは「観客の前で音楽を奏でる責任をまっとうし、私たちにしかできない演奏を届けようと追求と実践を繰り返した」と練習期間を振り返り「この間、団員一人ひとりが音楽の温かみに触れ、演奏する楽しさを再認識できたのではないか」と手ごたえをつかんでいた。

独奏を披露した金世怜さん

一方、初めて出演したサックス奏者の金世怜さんは「これまで支えてくれた家族への恩返しの場」として舞台に立ったと話しながら「こんな状況でも、音楽を通して同胞が集まれることが何よりうれしい。私も音楽をもって同胞社会を盛り上げる一員としてこれからも活動に邁進したい」と力を込めた。

文団長は「今回の演奏会が次につながる契機になれば。これからも各地の吹奏楽団と切磋琢磨しながら、奏者、観客ともに音楽を心から楽しめる場を作っていきたい」と語った。

(金紗栄)

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