在日本朝鮮文学芸術家同盟

新たな繋がりを力に/ハンアルム管弦楽団

《朝鮮新報》2022.04.13

初の演奏会

朝・日の奏者ら83人で構成されたハンアルム管弦楽団。10日には楽団結成後、初となる演奏会「胎動~movement~」が成功裏に行われた。実行委はもとより出演者らは、音楽を通じて生まれた新たな繋がりを力に、未来を見据えていた。

ハンアルム管弦楽団による演奏会は盛況だった

「朝鮮の音楽をフルオーケストラで演奏したい」

演奏会開催に至ったのは、神奈川同胞で構成された吹奏楽団所属の許道鎮さん(52、団長)のこの一言がきっかけだった。

初級部4年のころから吹奏楽部に所属し、クラリネットを演奏してきた許さん。2年前からは東京都内の朝鮮学校で民族器楽部の指導を受け持つように。その過程で「吹奏楽だけでなく民族器楽にも関心を持つようになった」という。

各地の同胞演奏会では、吹奏楽や民族管弦楽器による個別の演奏会は行われているものの、管楽器と弦楽器、民族楽器がともに舞台に上がるケースは稀だ。一方、朝鮮で作曲される音楽は西洋楽器と民族楽器の音色を想定して構成されたものが多いという。かねてから「祖国の作曲家が描いた旋律を奏でたい」という思いがあった許さんは、さっそくホールを取り押さえ、出演メンバーを集めていった。

まず声をかけたのは、プロバイオリニストの崔樹瑛さん(38)だった。日頃フリーで活動している崔さんは、これまで舞台をともにした日本人奏者たちと広い繋がりがあった。

許さんの提案を聞いて「とても興味がわいた」と振り返る崔さん。すぐに日本人奏者らに声をかけた。「友人たちも関心を持ってくれて快く応じてくれた」。

2019年に企画した演奏会の準備はしかし、コロナ禍により思うように進まなかった。一度の延期を経て本格的に練習がはじまったのは今年の年初だった。

今回出演した日本人奏者のほとんどは、これまで朝鮮音楽を演奏した経験がない。だからこそ限られた時間の中で曲の完成度を高めるための努力が欠かせなかったという。

リハーサルのようす

ハープ奏者の山浦文友香さん(35)は「はじめは慣れないリズムを理解するのに苦労した」と話す。特に民謡「陽山道」の独特なチャンダンは理解に時間を要した。動画配信サイトを見て曲を耳に慣らし、練習を繰り返したという。

一方、山本さんはこの期間を振り返り「新たな音楽、新たな楽器と出会うことができて嬉しい」とも語った。「朝鮮には素晴らしい音楽がたくさんあることに気づいたし、民族楽器の音色の良さに感動した。楽団の名前通り、ひとつの美しさをみんなと一緒に作り上げたいと思う」。

同胞奏者も格別な思いを抱いていた。神奈川吹奏楽団所属の李英珠さん(51、オーボエ奏者)は、今回の演奏会を「神奈川吹奏楽団にとっての良い糧にしたい」と期待を込めていた。

「同胞と日本人奏者によるフルオーケストラで朝鮮の音楽を奏でる機会はそうない。観客の皆さんが懐かしみ、楽しんでくれたら嬉しい」。

公演は観客の好評を博していた(提供=公演実行委員会)

音楽の力、再認識

演奏会はSNSを通じて広い関心を集め、当日は県内のみならず北海道や大阪から足を運んだ人もいた。「コロナ禍で制限された生活が続く中、演奏に元気をもらった」「オーケストラならではの迫力を感じた」など、観客はそれぞれ感想を口にしていた。

他方、演奏会の裏では、神奈川中高の吹奏楽部員、卒業生たちが汗を流していた。

公演準備に奮闘する生徒たち

パンフレット整理や会場案内、舞台整理のため朝早くから会場に出向いた吹奏部員と卒業生たち。かれらは「朝・日の演奏家による迫力溢れるオーケストラを見届けることができて嬉しい」と声をそろえた。

中級部2年の尹希喆さんは「プロの奏者たちに会えて光栄だ」と笑みを浮かべた。将来は音楽に携わることを夢見ている尹さん。「演奏を聞いて学ぶことが多かった。初めて聞いたときには大きな衝撃が走った」と興奮した様子で語った。

また、高級部3年の朴莉世さんは「民族の垣根を超え、ひとつの音楽を作り上げた奏者らの姿を見て、音楽の持つ力を改めて実感した。先輩たちのように人に感動を与えられる演奏をできるよう、これからも部活動に励みたい」と力を込めた。

当日は北海道や大阪から足を運んだ人もいた

音楽を通し、新たな朝・日の繋がりが生まれた演奏会。実行委の林知也さん(48、ホルン奏者)も手ごたえを語った。

日本学校出身者の林さんはこれまで日本人として生きてきたが、ひょんなことをきっかけに同胞との交流が深まり、今回の演奏会にも携わることになった。プロオーケストラの裏方としての経験を持つ林さんは、今回も全パートの楽譜配りを担当。「ヘイトスピーチなどが深刻化する今だからこそ、朝鮮の音楽を通じて在日同胞の存在に触れてほしい」と力を込めた。

許道鎮さんは「音楽は民族の隔てをもなくすことができると再認識した」と述べながら、これからについて「演奏会ははじまりに過ぎない。今回の経験を踏まえ、朝・日の演奏家たちがともにする場を継続的に作っていきたい」と意気込んだ。

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